ESWL(体外衝撃波結石破砕術)の治療成績


 2019年のESWL(体外衝撃波結石破砕術)症例数は688症例、治療件数は816件でした。1症例当りの平均施行回数は1.18回でした。

 

  ESWLの治療成績は『結石の位置、大きさ、成分、長期間詰まっていたか』によって影響されます。

 

ESWL (体外衝撃波結石破砕術)の治療成績  (2019年/1~12月)

 

結石治療の有効性の評価は一般的に『治療開始後3ヶ月』の時点で行います。

 

★有効率の定義はESWL後3ヶ月の時点で『レントゲン上、残りの結石が4mm以下となった』です。

★完全排石率(SFR:stone free rate)の定義はESWL後3ヶ月の時点で『レントゲン上、結石の残りが完全にない』です。

★長期嵌頓結石の定義は『無症状で健診のエコーなどで発見された または 長期間(6ヶ月〜1年以上)尿管に詰まったままになった』結石としています。

 

 

 

 

 

 

 尿路結石症は存在する位置により分類されます。 

 

 腎盂腎杯結石:R2  腎臓内部(腎杯・腎盂内)

 

 腎盂尿管移行部結石:R3  腎臓と尿管のつなぎ目

 

 上部尿管結石:U1  腎臓の出口から骨盤上縁まで

 

 中部尿管結石:U2  骨盤骨に重なる

 

 下部尿管結石:U3 骨盤下縁から膀胱移行部まで


腎結石(R2:腎杯結石)破砕治療の成績


 

腎結石(R2:腎杯結石)の体外衝撃波治療の成績は

大きさと結石の位置で異なります。

 衝撃波治療は破砕された結石が自然に排出されるのを待つ治療のため、腎臓の下に位置する結石(下腎杯結石)が排出する確率は腎臓の構造によって影響されます。

排石しやすい構造かどうかはCT検査の冠状断(横切り)によって推測が可能です。

 

  1. 直径10mm以下の結石
  • 下腎杯以外の結石(27例)

平均治療回数1.18回、有効率96.3%、完全排石率77.8%でした。

  • 下腎杯結石(50例)

平均治療回数1.12回、有効率98%、完全排石率60.0%でした。

 

  1. 直径10〜20mmの結石
  • 下腎杯以外の結石(29例)

平均治療回数1.32回、有効率93.1%、完全排石率62.1%でした。

  • 下腎杯結石(28例)

平均治療回数1.29回、有効率85.7%、完全排石率32.1%でした。

 

 10mm以下の下腎杯以外の結石では約80%の症例で、下腎杯の結石では約60%の症例で完全排石が可能でした。衝撃波治療により結石はESWL治療で4mm以下の細かい破砕片にする事が可能ですが、完全に排石するかどうかは前述の通り腎臓の尿の通り道の構造により影響されます。

 ESWL治療後に内視鏡手術(TUL)を必要とする症例は結石の位置にかかわらず、20mm以上の結石で計2例でした。結石が大きいほど排出される過程で結石が尿管につまるリスクが高い事が考えられます。

  結石長径が20mm前後の場合には画像検査を評価し、治療効果および合併症のリスク軽減を目的として内視鏡手術(f-TUL)等を初期治療としてお勧めする事があります。

 

腎結石(R3:腎盂腎杯結石)破砕治療の成績


  この位置の結石は10mm以上の大きさで発見されることが多く、結石の先端の部分の通過障害を伴うことが多くなります。結石の嵌頓に伴う水腎症が顕著である事が多く、破砕された結石片が腎臓内に残りやすい傾向にあります。

  1.  直径10mm以下の結石(6例)

平均治療回数1.20回、有効率83%、完全排石率50%でした。

 

      2.    直径10〜20mmの結石(10例)

平均治療回数1.60回、有効率90%、完全排石率60%でした。

 

 内視鏡手術(TUL)を必要とする症例はありませんでした。

      

 

      

上部尿管結石(U1) 破砕治療の成績


 2019年に上部尿管結石に対して衝撃波治療を行った87%が結石の痛みを契機として診断された『一般的な結石』です。この場合,体外衝撃波治療による完全排石率は約90〜95%で良好です。内視鏡手術への移行を必要とする症例は2例のみでした。

 一方で痛みの自覚なく健診の超音波検査で尿管結石と診断されたり、水腎症の存在下で長期間(6ヶ月〜1年以上)同じ位置から移動せず放置した結石の場合は『嵌頓結石』の疑いがあります。嵌頓結石は炎症による尿管の肥厚・閉塞を伴っている事が多く、一部の症例で衝撃波治療で結石を破砕しても尿管に取り込まれている結石の排出が難しい事があります。

 嵌頓結石の場合でも70%で衝撃波治療のみで結石が消失します。一方で約30%はESWL治療に抵抗性で、尿管閉塞の解除と結石の完全摘出のため内視鏡手術(TUL)を追加で行う必要があります。

 

1.   一般的な結石

 直径10mm以下の結石(218例)

平均治療回数1.09回、有効率100%、完全排石率96.8%でした。内視鏡手術(TUL)を必要とする症例は2例でした。

 

 直径10〜20mmの結石(47例)

平均治療回数1.36回、有効率100%、完全排石87.2%でした。内視鏡手術(TUL)を必要とする症例はありませんでした。

 

上部尿管結石は衝撃波治療で破砕された結石片が腎臓に戻って排石されない事があります。10mm以下の結石で3%、10〜20mmの結石で13%が腎臓に結石片が残った状況で経過観察となりました。

       

      2.    嵌頓結石

 

 直径10mm以下の結石(17例)

平均治療回数1.35回、有効82.4%、完全排石率64.7%でした。

 破砕効果不良のため内視鏡手術(TUL)へ治療法の変更が必要な症例は5例(29.4%)でした。

 

 直径10〜20mmの結石(20例)

平均治療回数1.95回(、有効率70%、完全排石率60%でした。

 破砕効果不良のため内視鏡手術(TUL)へ治療法の変更が必要な症例は7例(35%)でした。

 

 

中部尿管結石(U2)破砕治療の成績


 中部尿管結石に対する体外衝撃波治療の成績は良好で、1例を除いて体外衝撃波治療で結石消失を確認できました。この位置の結石は骨盤骨に重なる位置にあるため、レントゲンで結石が同定しづらく治療ができない場合があります。

 

10mm未満の結石(47例)

 平均治療回数1.06回、有効97.9%、完全排石率95.7%でした。

 

10〜20mm未満の結石(6例)

 平均治療回数1.17回、有効率83.3%、完全排石率83.3%でした。

 

   内視鏡手術(TUL)を必要とする症例は1例でした。

      

下部尿管結石(U3)破砕治療の成績


下部尿管結石の体外衝撃波治療の成績は良好で、1例を除いて体外衝撃波治療で結石消失を確認できました。

 

10mm未満の結石(105例)

 平均治療回数1.04回、有効99.0%、完全排石率98.1%でした。

 

10〜20mm未満(7例)

 平均治療回数1.14回、有効率100%、完全排石率100%でした。

 

  内視鏡手術(TUL)を必要とする症例は1例でした。