再発とその予防について

生活習慣の改善


 尿路結石症は治療後に再発することが多く、尿路結石の再発率は5年で約50%と言われています。破砕治療後の患者様には結石の成分分析を行い、原因検索とあわせ、定期的な検診/再発予防対策が重要です。規則正しい生活/偏りのない食生活をおくること、水分をよく摂取すること(1日に2000ml以上)が予防策となります。また、下記のように結石の成分によっては内服薬で結石再発を予防できる場合があります。

 日常生活で改善可能な再発予防策として

① 水分摂取

② 生活習慣/食生活の改善

 

  が考えられます。

 

①水分摂取

 水分摂取を行うことにより、結石形成促進物質(カルシウム、シュウ酸、尿酸)の濃度を減少させることができます。

① 飲水量を多くする。

(心臓や腎臓に問題なければ2L程度の尿量を確保する。)

 

② シュウ酸の多い飲料の過剰摂取は控える。

(多い例:コーヒー/紅茶/ウーロン茶/緑茶 コーヒーや紅茶を飲む際にはミルクを混ぜる。)

 

③ 清涼飲料水や甘味飲料水の過剰摂取をさける。(多量の砂糖を摂取することにより、尿中カルシウムを増加させることになります。)

 

③ アルコールの多飲は控える。

(アルコールを飲むことにより一時的に尿量は増えますが、就寝中の脱水を引き起こし、また、尿酸/カルシウム/リンの尿中排泄を増加させます)

 

②生活習慣/食生活の改善

 尿路結石症の生活習慣/食生活の特徴は、高血圧/糖尿病/高脂血症の特徴と共通し、予防法も共通です。結石症を発症した際には、これらを改善することにより、未来におこる生活習慣病の発症を予防し、ひいては脳梗塞や心筋梗塞の予防となる可能性があります。

 

① 運動不足/肥満の改善

② 動物性タンパク質/脂肪摂取を減らすこと

③ カルシウム摂取不足の改善(600〜800mg/日)

④ 塩分過剰摂取の改善(10g/日以下)

④ 野菜/海草類の摂取不足の改善

⑤ 夕食から就寝までの時間の延長 (4時間以上空けること)

 

 

 

結石成分による薬物治療/生活指導


シュウ酸カルシウム結石

現在、尿路結石症の多くが、シュウ酸カルシウム結石です。この結石自体を溶かす薬はないため、上記の食事療法/飲水療法が主体となります。  食事療法の補助として用いられる薬剤としては

 

尿中のシュウ酸を減らす薬剤  → カルシウム製剤 マグネシウム製剤
尿中クエン酸を増加させる薬剤 → クエン酸塩製剤 (代表的商品名:ウラリット)

尿中尿酸を減らす薬剤    → 尿酸産生抑制製剤(代表的商品名:ザイロリック)

などの薬剤を使用することがあります。

 

 尿酸結石

尿酸結石は全結石の約5%を占めます。この結石の場合には溶解療法が可能です。 尿のpHが酸性に傾くと結晶化するため、尿をアルカリ化します。

 

  • 尿量の確保(2000ml以上)
  • プリン体の多い食事を減らす
  • 尿のアルカリ化(目標:pH6.0〜6.5) →  クエン酸塩製剤  (代表的商品名:ウラリット)
  • 尿中の尿酸へ減らす → 尿酸産生抑制製剤(代表的商品名:ザイロリック)

シスチン結石

シスチン結石は尿路結石症の1〜2%を占めます。シスチン尿症は遺伝性疾患で、アミノ酸(シスチン・リジン・オルニチン・アルギニン)の体内での輸送/再吸収障害が発生することにより、この中で特に難水溶性のシスチンが尿中で結晶化することにより発症します。

 シスチンは尿酸結石と同様に酸性尿で難溶性となるため、尿のアルカリ化を図ります。

  • 尿量の確保(2500ml以上)
  • 尿のアルカリ化(目標:pH7.0〜7.5)→ クエン酸塩製剤(代表的商品名:ウラリット)
  • シスチン結晶の析出を阻害 → チオプロニン(代表的商品名:チオラ)

 

 

参考文献:

尿路結石症のすべて 編集 日本尿路結石症学会 

図説 新しい尿路結石症の診断・治療  編集 伊藤 晴夫