体外衝撃波結石破砕術(ESWL)とは

体外衝撃波治療は放電によって衝撃波を発生させる装置から発生させた衝撃波エネルギーを体内の結石に照射して破砕する治療法です。破砕された結石片は尿とともに自然に体外に排出されるので、体に傷をつける事なく結石を除去できる、あらゆる手術の中で体の負担がもっとも少ない治療法です。ESWL装置の治療台に寝て、レントゲンで結石の位置を確認しながら、結石に焦点を合わせて衝撃波を3000〜4000発、約30〜60分間治療します。当院のESWLの成績は、より体に負担のあるTUL手術に匹敵する治療成績です。治療成績向上のため痛み止めをしっかり使います。そのため、最低1泊の入院が必要です。

尿路結石症の治療指針を記した「尿路結石症治療ガイドライン」の中でも、腎結石、尿管結石の治療の第一選択の一つとしてESWLが推奨されており、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)は身体への負担が少ない点から尿路結石症の治療法の主役となっています。

 

結石の大きさ(特に20mm以上)や硬さ、長く詰まった状態(特に6ヶ月以上)の結石では1回の治療で割れないことがあり、日を改めて繰り返し治療を行うことがあります。

 

野々村祝夫先生 監修 『そのまま使える!泌尿器科手術のすべて』より

 

 


野々村祝夫先生 監修 『そのまま使える!泌尿器科手術のすべて』より

 

 結石が大きい、結石成分次第では割れにくいことがあります。この場合には複数回のESWLが必要であったり、経尿道的結石破砕術(TUL内視鏡治療を併用しなければならない場合もあります。TULは麻酔が必要ですが、尿道からアプローチを行うことで腹部に傷ができず、効果的な治療が可能です。結石治療の方針を決める際には泌尿器科担当医とよくご相談ください。

 

ドルニエ社 DeltaⅡ                                                              ストルツ社 SLX-F2

 当院ではドルニエ社およびストルツ社の2台の体外式衝撃波結石破砕装置を用いて結石の特徴にあわせて治療しています。

 

 1回の体外衝撃波治療で結石の破砕を行うためには、衝撃波の強さを一定のレベルまで上げる必要があります。しかし、体外衝撃波治療は痛みを感じない場合もあれば、冷や汗が出るほどの痛みを伴うこともあります。この痛みは結石の位置・体位・機種によって異なります。

 

 一般的に強い痛みが続く場合には『衝撃波の強さを下げる』、『治療を途中で終了する』ことになります。これによって衝撃波治療が不十分となり、複数回の体外衝撃波治療が必要になる・または破砕効果不良で内視鏡手術(TUL)への治療法変更を余儀なくされます。

 

 また、治療効果をあげるために結石位置・レントゲンの写りやすさ等の条件により適切な治療機器を選択する必要があります。

 

 当院では多数の治療症例の経験に基づき、『体外衝撃波治療を可能な限り1回で行い、より負担のかかりやすいTUL手術への移行率を下げる』目的で以下の対応を行なっています。

 

 

1.  ESWL治療の経験が豊富な医師が治療を担当します。

2.  結石の大きさ、位置に応じて治療機器を選択します。

3.  坐薬のみでは痛み止めの効果が限られるため、積極的に点滴から痛み止めを使用し除痛をはかります。

4. 『治療を行う方向の検討(腹側から、背側から)』『衝撃波を照射する角度の変更』等の調整を行います。

5.  ESWLの治療中に効果不良と判断した際、治療方向の変更(例:腹側→背側)・治療機械の変更を行います。

6.  結石治療を専門として一日に7件の治療を行うために、ESWL治療機械のメンテナンスを密に行っています。

 

 当院での体外衝撃波治療は『入院での治療』を標準としています。

 これは治療中の痛みに応じて必要な痛み止めを追加して治療していること、1度の治療で結石が破砕される確率が高く治療当日から翌日にかけて排石に伴う痛みのコントロールする必要があるためです。

 

 

 ただし、以下の場合には日帰りでの治療を行っています。

 

 ・結石が痛みを引き起こし難い位置にある場合

 ・結石の大きさが5mm程度の小さい尿管結石で衝撃波レベルを上げなくとも治療が可能な場合

 

 詳しくは外来受診時にご相談ください。

ESWLの適応

ほぼすべての方で安全に治療できます。

しかし、以下の場合は原則的に治療は行いません。

  • 妊娠中の方
  • 出血傾向のある方
  • 腎動脈瘤のある方

 

極度肥満方や安静が保つ事ができない小児の場合、位置あわせが困難でこの場合は主に内視鏡治療が選択されます

 

体外衝撃波結石破砕術(ESWL)の治療

 治療は 破砕装置のベッドの上に仰向け または うつ伏せとなり、レントゲンを用いて結石の位置あわせをします(下記 結石治療の実際参照)。位置合わせ後、30分~1時間の間に1000回~4000回程度の衝撃波を結石に向けて照射します。大きさが5mm程度の小さい尿管結石は入院せずに日帰り治療が可能な場合もあり、痛みがなければ、翌日から普段の生活や職場への復帰が可能となります。

治療中には衝撃波による痛みがありますが、積極的に痛みの管理を行って除痛を図り、治療効果を最大限に引き出します。治療時には 医師と共に、看護師がそばにいて、心電図モニターや血圧・酸素モニターを常に監視し治療を行います。

 

 治療中は適宜レントゲン透視にて結石の位置・破砕の程度を確認していきます。

 

ESWLの合併症

皮下出血:衝撃波の通過する部位に皮下出血がみられることがありますが、数日で消失します。 

 

血尿:結石が衝撃波により動かされることで尿路の粘膜が傷つき出血するために血尿が出ます。治療直後に血尿が出ますが、通常数時間で収まります

 

尿管の閉塞:破砕された結石の破片が尿管内につまると痛みが生じます。鎮痛薬を使用し、症状を和らげます。

 

急性腎盂腎炎:発症すると38度以上の発熱、背部痛などの症状を認めます。尿路は通常無菌ですが、尿路に結石が存在すると尿に細菌が常在することが多くなります。尿管結石が原因で尿の流れが閉塞している状態で発症することが大半ですが、体外衝撃波治療により割れた結石から細菌がばらまかれ、尿および腎臓に感染することにより生じます。腎盂腎炎が生じた場合は抗生物質の点滴による治療が必要となります。場合によっては入院期間が延長したり、尿管ステントを留置することが必要になることもあります。

 

腎被膜下出血:衝撃波のために腎臓表面の細い血管が破綻して腎臓周囲に血腫が生じることがあります。発生率は1%程度とされています。症状としては疼痛の持続、血尿の持続などがあげられます。血腫の形成が疑われたときは血液検査、超音波検査などをおこない診断を下します。血腫が生じた場合には退院が延期となり、止血剤・抗生物質の点滴治療をおこないます。血腫は大きさにもよりますが数ヶ月で自然に吸収されます。

 

ESWLの留意点

・結石の大きさや硬さによってはESWL1回では全て破砕しきれないこともあり、数回の繰り返し治療が必要な場合があります。また、ESWLを複数回施行しても破砕効果不良な硬い結石の場合には麻酔下にTUL(経尿道的尿管結石破砕術)をお勧めする場合があります。

 

・比較的大きな結石(1.5cm以上)の場合には破砕された結石片が一度に尿管内に移動し尿管が閉塞することがあります。これにより、激しい痛みや急性腎盂腎炎を来すことがあります。この症状の予防のため、ESWL治療前に尿管カテーテルを挿入する処置を行い、尿の通過性を確保することをお勧めすることがあります。この場合、外来での排石の確認ののちカテーテルを抜きとります。

 

 治療前に発熱が生じた場合などには急性腎盂腎炎を発症するリスクが高まるため治療を中止することがあります。

 

尿管ステント (Boston Scientific ホームページより)
尿管ステント (Boston Scientific ホームページより)